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■ 風邪にまつわるTips(4)

2018.11.10(07:00) 515

風邪に抗菌薬。

やはり避けて通れない話題ですね。

『抗菌薬、いわゆる抗生物質は風邪ウイルスには無効である。抗菌薬の乱用が社会問題化し、スーパー耐性菌の出現が一般向けのメディアでも取り上げられる。』

などの話は若い方々を中心に広く知られるようになってきたと年々実感します。さすが情報化社会。

しかし、根強い抗生物質信仰に囚われた人々も未だに多い。とにかく「抗生物質を下さい」。

この問題が根深いのには理由があります。

(1)患者にノーと言うにはエネルギーが要る
患者を怒らせるのは論外ですが、多忙な業務中に「いえ、そうはおっしゃいますが、ウイルスには原理的に抗生物質は無効でして、耐性菌の出現リスクもありますし、厚労省も…」などと論じ始めると患者のキャラクターによっては収拾がつかなくなり、莫大な時間と労力を費やしても得られる結果が「無駄な処方を1つ減らせただけ」という徒労感。だったら始めから黙って処方箋を書けば良かった!と後悔するんです。

(2)全ての風邪がウイルスから発症するわけではない
1割程度は細菌性の上気道炎=風邪もあると言われております。確かに抗生物質を追加することでケロリと良くなる例も経験します。そこを突かれると痛い。もちろん二次感染、例えばウイルス性の風邪をこじらせて細菌性肺炎を合併するなんてよくありますが、それを予防する効果は否定出来ません。患者によっては「こじらせて肺炎になったらどう責任とるんだ!」なんて言う人もいます。

(3)ダブルスタンダード
切り傷などの外傷や縫合などの小手術でも安易に抗菌薬が使われますが、それもエビデンスレベル(根拠の信頼性)は低いのに、現状、風邪に対する処方ほどは悪く言われない傾向があるのも事実です。

てことで、いくらWHOや厚労省が働き掛けても容易に抗菌薬の安易な処方は根絶出来そうにありません。


でも!

ここが大事なのですが、肺炎にしても咽頭炎にしても、それが細菌性だとして、その病原菌を退治するのは決して抗菌薬ではなく、当人の免疫力であるという厳然たる事実です。抗菌薬は多くの場合、免疫力のアシスト役なのです。

ここを勘違いしている患者さんが極めて多い。まるで抗生物質を飲まなきゃ病気は治らないと信じているかのようです。

もちろん、病原菌の種類や重症度によっては抗菌薬が極めて重要な役割を果たします。この薬がなければこの人亡くなってたな、って。でもそれってよっぽどのエマージェンシーの場合。

繰り返しますが、治る病気が治ったのは、あなたの免疫力が頑張ったからです。

もともと元気な人の「ちょっと昨日から風邪っぽくて…」なんて程度の風邪は、それがたとえ細菌性であっても抗生物質は不要なんです。

そして、抗菌薬には直接的な副作用もあります。一番多いのは下痢ですね。アレルギー反応も起こりやすい。

結局抗菌薬は賢く使うべき薬です。

抗菌薬使用は悪だ、使わない方がいい、と闇雲に言うのではありません。特に希望していないのに医師が抗菌薬を処方しようとするときは、きっと何か考えがあってのことなのでしょう。

まだ続きます。
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