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■応招義務と患者サマ

2018.11.26(14:44) 553

産経新聞によれば、厚生労働省が医師の応招義務を見直すよう動いているようです。



医師と患者は対等の関係であるべきです。どちらかが上位という関係はいずれ破綻します。

そのような観点からでしょうか、東大病院では患者を「様」の敬称で呼ぶことを事実上禁止しています。一説によるとかつて「様」で呼ぶよう改革したところ、患者からのクレームや理不尽な要求が増大したのだとか。

ところが民間病院やクリニックでは「様」付けが大流行。非常勤のボクがうっかり「さん」付けで呼ぶと「あのー大変申し訳ないんですけど、患者様は様付けで呼んでくれませんか」とスタッフに注意される始末。

『お客様は神様です』という日本的価値観の是非まで論じるつもりはありませんが、ひとつ言いたいのは医者にとって患者は客ではない、ってことです。

(あ、人間ドックは別ですよ。利用者さんは間違いなくお客さんです。患者ではありません)

無論、経営者たる医師や事務方にとっては大切な『お客様』かも知れませんが、ひとたび診療関係が生まれたあとは、医師は患者の利益(つまり健康)のためには彼の要求を蹴飛ばしてでも対立することを避けてはなりません。いわゆるサービス業とは本質的に異なります。

ところで、患者には医師を選ぶ権利がありますが、医師には患者を選ぶ権利があると思いますか?

医師法19条には『診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。』とあります。これが『応招義務』というものです。

これは非常におかしな法律です。義務とありながら罰則はなく、かつ世間の多くの医療施設や医師は事実上の診療拒否を公然と行っているのです。

来院すれば門前払いにするための『ブラックリスト』はたいていの病院にあるでしょうし、そもそも開業医の先生はどんなにかかりつけの患者が要求しても休日はしっかり休むでしょう。

つまりこの法律は医師が殿様商売していた古い時代の骨董品的な倫理規程であって、法的な存在意義はすでに失われているのです。

ところが、この有名な条文をもって『医師は患者を選んではいけない』と勘違いしている患者や医師がたくさんいます。

さらにいえば、まともな企業では決して許されない過酷な勤務実態(労働基準法?なにそれ?)も、この条文のために正当化されています。

大切なのは、

医師は患者の利益のために努力と研鑽を惜しまない。
患者は自分の利益のために医師への協力を惜しまない。

これだけです。この関係が成り立たなければまともな診療行為なんて無理なんですから、医師は患者との契約を破棄出来るに決まってます。

厚生労働省による応招義務の見直し。それが医師の働き方改革にどうつながるか。とくとお手並み拝見いたしましょうね。
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