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■傷は洗おう

2019.12.17(23:44) 792

ボクが可愛らしい小2男子だったころ、工作の授業中に千枚通しで左手のド真ん中を突き抜くという、衝撃的な怪我を負ったことがあります。

掌に深々と突き刺さった千枚通し。

余りにシュールな光景に、我ながら何が起こったのか呑み込めず、痛みも感じず、ただ呆然と眺めていたのを覚えています。

しかし、新米のおなご先生は逞しい人でした。

ボクらが「ラーメン頭」と呼んでからかっていたソバージュ頭のその先生は、しょんぼり佇んでいるボクを見付けるや、速やかに流し場に連れていき、冷たい流水で洗いながらそーっと千枚通しを引き抜いて、「グーパー出来る?」と訊きながら、ボクの掌の表裏に空いた穴を指で揉んで長らく洗ってくれました。最後に絆創膏を貼って授業を再開したのでした。排水口に消えていく真っ赤な血が印象的でした。

ところで、最近娘に訊きましたら知らないんですって、千枚通し。確かに最近は見ませんねー。当時はあんな危ないものを自由に児童に使わせていたのです。昭和と平成の狭間にあった、何とも牧歌的な学校でしたね。

さて、このときラーメン頭の取った行動は誠に正しいのです。

傷は、受傷するや速やかに水道水で洗うべし。

幼時に身をもって知ったボクでしたが、これを知らない人の何と多いことでしょう。

包丁で切ろうがスライサーで削ごうが釘を踏み抜こうが火傷しようが、あらゆる傷を見た場合、まずは水道水で流しましょう。優しく洗いながら気持ちを落ち着けましょう。

愛する我が子が怪我を負って流血しているとき、キャアキャアと騒いでいるだけじゃ失格です。

その初期行動を取るか取らぬかで、傷の治り方が大きく変わります。無論バイ菌に感染しにくくなり、より早く、より綺麗に治るようになります。恐ろしい破傷風のリスクも当然減ります。

救急病院に来る患者さんのうち、「洗える環境にあったのに洗って来なかった人、洗うという発想すら湧かなかった人」は極めて多い。そもそも「水道水は不潔であると信じている人」が依然多いのです。

ボクは内心大変な問題だと考えています。義務教育レベルでしっかり教えて欲しいくらい。

ちょっと包丁で切った数センチ程度の浅い切り傷なんて、血を噴いていたり指が動かなくなっていたりしない限り、まあ病院に行けばきっと糸で縫合されるでしょうが、別に縫合しなければ治らないなんてことはなく、水道水でしっかり洗って清潔な布で圧迫し、血さえ止まればセロハンテープを貼るだけで綺麗に治るものなんです。(その判断はプロだから出来るのであって、不安なら必ず受診して下さいね!)

ラーメン頭のような人が周囲にいれば、日本の医療費はずいぶん節約出来ますよ。

ま、今の時代、学校の先生がそういう対処で終わらせていれば、一部の親御さんたちは怒り心頭でただではすまないかも知れませんけどね。(^^;

今なら、もしかすると救急車の出番でしょうかね。でも、ボクらがやることはせいぜいラーメン頭の対処に加え、念のためにレントゲンで骨が傷ついていないか確かめて、場合によっては抗菌薬を気持ち処方する程度でしょうか。それでも救急車はないですよ。

なんてことを、救急病院の当直中に考えています。

左手のど真ん中に長らく遺っていた傷痕は、三十年の間にほとんど消えてしまいました。ラーメン頭のおなご先生、元気かなあ。先生の本当の名前、なんだっけかなあ…。

野趣溢れる故郷、高知の思い出でした。
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