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■おしつけ読書

2020.03.03(15:35) 874

その昔、新潮少年文庫という全10巻の児童文学集がありました。刊行は71年から73年にかけて、当時気鋭の作家陣の書き下ろしになります。

ボクが紅顔の小学三年生だった夏、そののち国語教師となる伯父が全巻を譲ってくれたのでした。ああ、何度繰り返し読んだことか。今や絶版で入手しにくいものも多いのですが、その中で辛うじて残る以下の作品群は一応名作といえるのでしょう。

さ、この休校期間に読んでもらいましょう。

『だれも知らない国で』星新一
星新一といえばショートショートですが、恐らく彼の唯一の長編童話でしょう。他人の夢の中にさ迷いこんでしまった男の子の不思議な物語。娘は少なくとも二年前に読んでいます。今は『ブランコのむこうで』と題名が変わっていますね。



『ユタと不思議な仲間たち』三浦哲郎
劇団四季のミュージカルにもなっていますので、この文庫内では一番有名なのではないかな。都会から来たもやしっこ『ユタ』が、悲しい過去を背負う座敷わらし達との交流を通じて逞しく賢く成長するお話です。ボクはね、重ねましたよ、我が身とユタを。



『つぶやき岩の秘密』新田次郎
『八甲田山死の彷徨』や『武田信玄』の新田次郎による児童小説。悲しい時代の殺人を背景に、主人公の少年が謎を解く冒険譚。娘に昨年紹介したときは「恐い!夜眠れなくなる!」とギブアップされましたが、今なら読めるでしょう。NHKでドラマ化されていますから、ご存知の方も多いかな。ボクの生まれる前の話ですけど。今なら「はいはい、死亡フラグでしょ」と分かる、爽やかな人のいい脇役があっさり殺されるのは、子ども心には大変衝撃でした。



『蛙よ、木からおりてこい』水上勉
大好きな水上勉の、彼には珍しい児童小説です。自らを誇る気持ちの強いトノサマガエル『ブンナ』が主人公で、仲間にいいかっこしたばかりに絶体絶命の境遇に陥り、辛うじて生還して生命の尊さと食物連鎖の悲哀、生き物の弱さと狡さを学ぶという、水上らしい仏教的な思想が下地にあります。娘は二度ほど読んだようですが、「覚えてる?」と訊きますと「トンビが恐かったことしか覚えてない」などと情けないことを言いますので、読み直してもらうことにしました。今は『ブンナよ、木からおりてこい』にタイトルが変わっていますね。エンディングも初出とは少し異なります。



以上、古くさいものばかりですけどご紹介させて頂きます。今の児童文学にはない硬調な表現もたまにはいいものではありませんかね。
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